元リフォーム営業マンが語る、素人が陥りがちなワナとは
こんばんは、元リフォーム営業マンのユースケです。
梅雨の時期になると、お客様からいただく相談で特に増えるのが「雨漏り」に関するものです。
「他の業者に修理してもらったのに、また雨漏りしてきた…」 「安く済ませようと自分で応急処置をしたら、かえってひどくなってしまった…」
このようなご相談を受けるたびに、本当に心を痛めてきました。なぜなら、雨漏りは単に「水が漏れてくる」というだけでなく、家の構造を腐らせたり、カビを発生させたりと、住まいの寿命を縮める深刻な問題だからです。
そして、その多くは「雨漏りの原因」を正しく特定できていないことから起こります。残念ながら、建築業界でも雨漏りに詳しい専門家は少なく、安易な修理で事態を悪化させてしまうケースが後を絶ちません。
今回は、私が営業マン時代に見てきた失敗事例を踏まえながら、なぜ雨漏り修理が難しいのか、そして、皆さんが「失敗しない」ために、どのような点に注意して業者を選べば良いのかを、徹底的に解説していきます。
雨漏り修理が難しい「3つの理由」
雨漏り修理は、単なる「修理」ではありません。まるで刑事の捜査のように、原因を特定するための「調査」が最も重要になります。その難しさには、主に3つの理由があります。
1. 水の侵入口と出口が一致しない
「天井のこの部分から水が垂れてくるから、ここを直せば大丈夫だ!」
そう考えてしまいがちですが、これが雨漏り修理の最大のワナです。雨漏りは、水が侵入した場所から、家の内部を通って最終的に目に見える場所まで出てくるため、その経路は非常に複雑です。
たとえば、屋根の小さなひび割れから入った水が、何本もの木材を伝って、まったく別の場所にある天井の照明の穴から出てくる…なんてことは日常茶飯事です。
つまり、目に見えている「水が垂れてくる場所」だけを修理しても、根本的な原因は解決しないのです。
2. 見えない場所での劣化が進行している
「ベランダのひび割れが原因だと思って、コーキング剤で埋めた」という失敗もよく聞きます。確かに、目に見えるひび割れを埋めることで一時的に水は止まるかもしれません。しかし、その行為がかえって状況を悪化させてしまう可能性があります。
ひび割れを埋めたことで、水は別の逃げ道を求めて、さらに家の内部へと侵入していきます。そして、壁の中や床下といった見えない場所で水が溜まり、木材を腐らせたり、シロアリを呼び寄せたりする原因になってしまうのです。
安易な応急処置は、目に見える問題を隠すだけで、見えない場所での劣化を加速させてしまうことを忘れてはいけません。
3. 業者によって知識と技術に大きな差がある
「家を建ててもらった工務店だから大丈夫だろう」「知り合いの便利屋さんが安くやってくれるから」と、専門外の業者に依頼してしまうケースもよく見られます。
しかし、雨漏り修理には専門的な知識と技術が必要です。
雨漏りのプロは、水の動きや建物の構造を熟知しており、目に見えない水の侵入経路を正確に「推理」する力を持っています。そして、その原因を特定するために、専用の機材を使って「調査」を行います。
専門外の業者は、この「調査」をせずに、目に見える劣化箇所を修理するだけで終わってしまうことが多いため、根本的な解決に至らないことが多いのです。
雨漏りのサインを見逃すな!こんな兆候はありませんか?
雨漏りは、天井から水が垂れてくるような、はっきりとした症状が出る前に、さまざまなサインを発しています。これらのサインを見逃さず、早めに専門家へ相談することが大切です。
- 天井や壁にシミができている
- 天井や壁の一部に、いつの間にか水が染み込んだような黄色や茶色のシミができている場合、それは雨漏りのサインかもしれません。
- カビ臭いにおいがする
- 家の中で特定の場所だけカビ臭いにおいがする場合、壁の内部や床下でカビが発生している可能性があります。
- 壁紙が剥がれてきた
- 壁紙が部分的にめくれていたり、ふくらんでいたりする場合も、壁の内部に水が侵入している可能性があります。
- サッシの周りが濡れている
- 窓のサッシの周りから水が染み出してくる場合、サッシと外壁の間のコーキングが劣化している可能性があります。
これらの兆候に気づいたら、決して放置せず、すぐに専門の業者に相談しましょう。
失敗しない雨漏り修理業者の「選び方」5つのポイント
では、本当に信頼できる雨漏り修理業者は、どのように見つければ良いのでしょうか。元リフォーム営業マンとして、皆さんに必ずチェックしてほしい5つのポイントをお伝えします。
1. 「調査」を丁寧に行う業者か
最も重要なのが、契約前にしっかりと「調査」を行ってくれるかどうかです。
雨漏りの原因を特定するために、専門の業者は以下のような調査を行います。
- 散水調査: 実際に水をかけて、雨漏りを再現し、水の侵入経路を特定します。
- 目視調査: 屋根や外壁、ベランダなど、家の外周をくまなくチェックし、劣化箇所を探します。
- サーモグラフィー調査: 赤外線カメラを使い、壁の内部の温度差を検知して、水の溜まっている場所を特定します。
これらの調査をせずに、いきなり「ベランダの防水工事をしましょう」などと修理を提案する業者は、根本原因を理解していない可能性があります。
2. 複数の原因を想定して説明してくれるか
雨漏りの原因は一つだけとは限りません。屋根の劣化と、壁のひび割れが複合的に絡み合っていることもよくあります。
信頼できる業者は、考えられる原因を複数挙げ、それぞれの原因に対してどのような調査を行い、どのように修理していくかを丁寧に説明してくれます。
逆に、「絶対にここが原因です!」と断定的な言い方をする業者には注意が必要です。
3. 見積もりが明確で、内訳が詳しく記載されているか
「雨漏り修理一式」のように、詳細が不明確な見積もりは危険です。
信頼できる業者の見積もりには、以下の項目が明確に記載されています。
- 調査費用
- 足場代
- 使用する材料名と数量、単価
- 工事内容と作業工程
「一式」で済まされている場合、後から追加費用を請求されたり、どのような工事が行われたか分からなかったりするトラブルに発展する可能性があります。
4. 「雨漏りが止まらなければお金はいらない」という言葉に惑わされない
一見、良心的に聞こえるこの言葉ですが、注意が必要です。
なぜなら、雨漏りは「修理した部分」とは別の場所から水が侵入していることが多いため、修理箇所を変えるたびに費用を請求される可能性があるからです。
本来であれば、最初の「調査」で根本的な原因を特定し、一回の工事で解決するのがプロの仕事です。調査をせず、場当たり的な修理を繰り返すような業者には注意しましょう。
5. 会社の情報が明確で、実績が豊富か
会社のホームページやGoogleマップなどをチェックして、会社の所在地や施工実績が明確になっているかを確認しましょう。
特に、雨漏り修理は専門的な知識と技術が必要なため、過去にどれくらいの雨漏り修理の実績があるのか、実際に工事を行ったお客様の声はどうなっているのかを、事前に確認することが大切です。
まとめ:安易な修理は「高い買い物」になる
いかがでしたでしょうか。
雨漏り修理は、目先の費用を安く抑えようとすると、かえって大きな出費につながる可能性があります。雨漏りの原因を特定しないまま修理してしまうと、いつまでも雨漏りが止まらず、最終的に家の構造を痛めてしまうことになりかねません。
元リフォーム営業マンとして、皆さんにお伝えしたいのは、「雨漏りは、必ずプロに調査を依頼すること」です。
調査費用はかかりますが、それは根本的な原因を突き止め、家を守るための「安心を買う費用」だと思ってください。
「この業者で本当に大丈夫だろうか…?」と少しでも不安に感じたら、決してその場で契約せず、複数の業者に相談し、比較検討することが大切です。
皆さんの大切なお住まいが、雨漏りから守られ、安心して暮らせることを心から願っています。
コメント